鋼の諸性質におよぼす合金元素の影響(参考)

構 造 用 鋼

元素名構造用鋼におよぼす添加元素の影響
Cオーステナイトに固溶し、焼入れ時、マルテンサイトを生ずる。C の増大とともに、マルテンサイトの
ひずみを上昇させ焼入れ硬さを増す。Fe Cr Mo V などと炭化物を作り、強度を増す。C 量の増加ととも
に引っ張り強さは増すが、溶接性を害する。
Si溶鋼中酸化物は、Mn 酸化物などと結合し、浮上脱離が容易なので、脱酸材として最も有効である。
フェライト相を強化し、300℃以下の焼き戻し抵抗性を大にするが、2%以上加えると塑性を害する
から添加に限度がある。
Mn焼入れ性を増し,強度を上げるが、焼き戻し抵抗がない。脱酸材として有効。S と結合して被削性を増し、
赤熱ぜい性を防止する。廉価である事が有効性を一層高める。多量添加すると酸化物が炉材を著しく
侵食する。 
P偏析を起こしやすく、ゴーストを形成し、繊維組織を作りやすい。衝撃抵抗を低下させ、焼き戻しぜい性を
促進する。被削性を改善する。
SFe との化合物は熱間加工性を害するので、Mn を加えて融点の高いMnS を形成させる。Mn Zr Ti Mo などと
結合して被削性を増す。
Cu高温加熱ではFe より酸化が少ないため、表面に富化し、赤熱ぜい性を起こす。Cu を加えるときは、おお
むね等量のNi を加え、赤熱ぜい性を防ぐ。時効性を有し強度を上昇さす。
Ni焼入れ性を増し、大型材の熱処理を容易にする。低温ぜい性を防止する。耐食性を改善する。
Cr焼入れ性焼き戻し抵抗を大にする。耐食性を大にする。安定した炭化物を作りやすいから浸炭を促進する。
Ni-Cr 鋼は焼き戻しぜい性が大になる。
MoCr と安定な炭化物をつくり焼き戻し抵抗を増大する。したがってMo 単独よりCr と併用すると効果が著しい。
焼き入れ性を上昇せしめる。Ni Cr 鋼の焼き戻しぜい性を消滅させる。構造用鋼に有効である。
V0.25%以下添加では焼き入れ性を増加し、0.3%以上ではかえって焼入れ性を減退し結晶粒を微細化する。
焼き戻し抵抗性が大になり、機械的性質は向上する。特にじん性が改善される。
W炭化物をつくり、硬さ上昇をもたらす。焼き戻し抵抗性を増大する。高価なため構造用鋼には使用されない。
Co焼き入れ性を減じる。構造用鋼には使用されない。
As赤熱ぜい性を促進する。
Sn衝撃値を著しく低下させる。赤熱ぜい性を促進する。
Ca強力な脱酸材、Ca は溶鋼中で気化して爆発しやすいからCa-Si ,Ca-Si-Mn などの状態で添加し、非金属介在物
の形態、分布の調整を行う。
B微量添加(0.001〜0.003% )で著しく焼き入れ性を増大する。過剰に加えるとFe2B を生じ赤熱 ぜい性を起こす。
Ti結晶粒を微細化する。焼き入れ性を悪化するが、焼入れ温度が高ければ逆に増加させる。強力な脱酸、脱窒材
として使用。強固な炭化物を生成する。
SeMn などと化合物をつくり、被削性を増す。S よりはるかに高価である。溶鋼の流動性を良くする。
Zr結晶粒を微細化する。0.1〜0.2%添加で著しく強度、伸び、絞りを高める。強制脱酸、脱窒、脱硫材
として使用することがある。
Nb強力な結晶粒微細化元素、結晶粒粗大化温度を上昇さす。焼き入れ性を減退する。焼き戻しぜい性を減退
させる。
Te被削性を増す。熱間加工を害する。
Pb鋼中に介在し被削性を増す。均一添加が難しい。
Re鋳造組織を微細化する。
Al強脱酸材として有効だが、溶鋼中での酸化物の浮上が困難で多量に添加出来ない。窒化するとAlN をつくり
著しく表面硬化する。結晶粒を微細にする。遷移温度を低下させる。
O種々の元素と酸化物を作り、機械的性質、熱間加工性を害する。地きずの最も大きな原因である。
NAl V Ti Zr Nb などと結合して結晶粒を微細にする。じん性を一般に低下させ、特に低温のじん性を害する。
H白点を生じ、特に大型材では割れを発生する原因となる。